第14回:エンパワメントとパターナリズム
「エンパワメント」という単語は様々な分野で使用される。
簡単に言えば問題を抱える当事者自身が力を付けて自己決定を可能とし、自分自身の人生の主人公になれるようにという観点から、あらゆる社会資源を再検討し、条件整備を行うという対人援助技術の一つであるが、例えば「当事者自身」を「出演者」に置き換えた場合、Puff Projectの趣旨はエンパワメントであるとも言えよう。
楽しめるステージングのために日々頭を抱えながら練習している出演者に対して、一緒に考え、時にはアドバイスし、方向性を探りながら出演者自身が切磋琢磨している一方で、そのためのソフト/ハード面の整備を行う。まさに「エンパワメント」ではないか。
ところが、大きな落とし穴がある。
「楽しめるステージング」という抽象的な概念はまさに「十人十色」であって、楽しみたい内容や対象は出演者によっても違えばお客様によってもまるで違う。にも拘らず「こうやれば君もお客様も楽しめるんだ、いや必ずそうなるんだよ、君はまだ知らないだろ、だから君にとって絶対有益だ」と一方的に押し付ける危険性を孕んでいる。
こういった、経験のある強い立場の者が、経験の無い弱い立場の者の利益になるとして、その意志に反してでも、その行動に介入・干渉することを「パターナリズム」という。「崇高な理念でこんなにいい活動を行っているのに、まさか出て行ったりしないでしょうね」と、こうなる訳だ。
しかし「エンパワメント」と「パターナリズム」を上手く融合させ活動に活かすことは、葛藤を伴いながらも現実的な事情に冷静に対処する上では重要なことである。
代表的な事例を一つ。
我々Puff Projectは「ライヴ当日において朝から打ち上げまでの全員参加に同意することが条件なのだから、部分的に参加することはできない」というスタンスで運営している。何故なら「設営や片付け等、面倒な事は抜きにしてオイシイところだけは頂く、と取られても仕方が無い」と警告すると同時に、最初から最後まで全員でやり遂げた後の「説明できない充実感」、イコール「関わりの密度は感動の密度」という部分でも、その日は一日空けて欲しいのである。しかし諸条件が折り合わずどうしても終日関われないメンバーが居る場合に、参加条件は前以て提示してあるものの、そこはやはり仕事や家庭が最優先だというスタンスもあるので「オレが出られない分まで、よろしく頼むわm(._.)m」とメンバーに伝え、また言われたメンバーはそれに応える事を条件に、可能な限り柔軟に対応している。
この「説明できない充実感」に対する我々の「共感作りへの手段」がパターナリズムを形成する最大要因なのではないか、という恐怖は常に付きまとう。メッセンジャーやオピニョンリーダー等自らの価値観に基づいて行動を起こし、他人の価値観と積極的に関わりを持とうとする人間の姿勢は、最初からパターナリズムを引っ提げて登場するようなモンであり、その付きまとう恐怖は宿命なのかも知れない。
次回「アファーマティヴアクション」において、この一連の葛藤の収束を試みる。
by.ミスターTAMIYA
2008/4/15 Tue
